首都圏に生まれ育ったが、学生時代から国内旅行が好きで、さまざまな都道府県を旅して回った。旅先のさまざまな地域で過疎化が進む現状を目の当たりにし、地方創生に携わりたいとの思いを持って新卒で総務省に入省。念願叶い、1年目に県庁に赴任して地方交付税算定業務や市町財政の支援に当たった。県内のさまざまな自治体に赴き、小さな自治体の職員の方々の負担が増大している中、責任感を持って地域のために尽力されている姿を見て、地方に横たわる社会課題の大きさを実感した。
その後、消防庁への出向を経て、私は3年目に総務省に戻った。自治税務局で法制度改革という大きな枠組みを設計する仕事はやりがいもあったが、次第に「現場」に戻りたいとの思いが強くなっていった。それは多分に、県庁時代の経験があったからだ。もっと地域に寄り添い、国と自治体の間に立ちながら地方自治体職員の方々を支援する仕事ができないだろうか。その答えの一つとして選択肢に挙がったのが、コンサルタントへのキャリア転換だった。
日本総研のリサーチ・コンサルティング部門は、数あるコンサルティングファームの中でも地方自治体からの受託案件が非常に多い点に強い興味を持った。実際に話を聞いてみると、国からの受託案件も多いが、自治体の業務改革支援、地域づくり支援や中小企業・ベンチャー企業への支援スキーム改善など、地域に飛び出し、現場に近いところで活動する案件が多くを占めるという。この会社なら、自分が理想とする地域への支援ができるのではないかと感じ、転職を決意した。
現在私が所属するデジタル社会・システムイノベーショングループは、官公庁の業務革新をITの導入を前提にさまざまな側面から支援しているグループだ。その内容は、業務フローの策定から業務改善方策の提案、情報化戦略の立案など多岐にわたる。単なる情報システム構築支援にとどまらず、自治体の現在の業務を可視化し、改善点を明確に洗い出す中で、自治体の行政的な課題を根本的にどう変えていくかを自治体の方々と共に考え、行動している。実際のシステム開発・実装フェーズはベンダーパートナーに委託する形となるため、あくまでも中立的な立場で支援を実施できるのも特徴的な点だろう。
私はコンサルティング業界未経験で転職したが、前職で得た知見はコンサルタントの仕事において大いに役立っている。自治体業務や政策立案業務で培った法令や制度に関する知識がベースにあるため、職員の方々の立場に立って支援できることが自身の強みの一つといえる。また、これは入社して初めて分かったことだが、官公庁の仕事とコンサルティングにおけるプロジェクトのマネジメント業務は、意外にも共通の要素が多い。業務をマネジメントし、他の職員の方々に作業を依頼、進捗確認を経て顧客に成果物を提出するという一連の業務プロセスはかなり前職と似ており、入社後のギャップは思いのほかなかったというのが率直な感想だ。こうしたプロセス一つ一つに対し、確実に、かつ正確に業務を推進してきた経験は、現職で自治体の方々や、共に働くメンバーやパートナーからの信頼を勝ち得る基盤となっていると思う。
一方、働き方は前職時代と大きく変わった。日本総研は個人の裁量の範囲が非常に大きく、自分がプロジェクトリーダーを担う場合は、案件内のほとんどの判断はリーダー自身が行う場合が多い。自分自身で業務を工夫し創造できるため、仕事の成果によって自治体の職員からよい反応をいただいたり、次回の案件につながったりした時の喜びは非常に大きい。自分の仕事が確実に自治体や地域に住まう人々の役に立っていると実感できる瞬間がある。
前職は激務だったが、仕事にまい進すればそれに見合う成長が得られると考えていたため、転職はワークライフバランス向上を意識したものではなかった。しかし現在はテレワークが基本となり、自分でも驚くほどプライベートが充実するようになった。また、前職より携わる業務分野が拡大し、自治体のデータ利活用支援や少子化対策など、以前から興味関心があったテーマへの深耕に時間を割くことができている。
転職して4年目の2022年、私はマネジャーに昇進した。自分で時間がコントロールできる環境の中でいかに自律的に成果を出していくか、その実力が改めて試される立場となったと自覚している。仕事の充実もプライベートの充実も自分次第ということは、日本総研で働く魅力の一つだ。私自身、楽しみながら取り組んでいきたいと思っている。