大学院で化学物質の研究に従事した私は、環境学の博士号を取得後に国際機関への就職を検討していた。しかし社会を見渡すと、世の中はCSR(企業の社会的責任)という概念が企業に普及し始める、まさに黎明期を迎えていた。私はコンサルタントへの道を選択。以来、大手監査法人や外資系コンサルティングファーム、日系シンクタンクなど複数の企業で一貫してサステナビリティ、ESGなどに関する企業の戦略策定、マネジメントスキーム構築等に関するコンサルティングに携わってきた。
サステナビリティ・コンサルティングの黎明期からこの業界に関わる中で、官公庁に対する政策提言立案に携わったり、あるいは大手事業会社で経営に近いポジションをオファーされたりすることもあった。しかし私は常にクライアントと対話し、支援する場を選び続けてきた。多様な経験を積んできた今、これからは自身の知見や視座を生かし、国内外のサステナビリティに関わる人々に貢献したい、さらには日本のサステナビリティ業界をけん引したいと考えるようになっていた。このような中で出会ったのが、日本総研だった。
近年、数多くのコンサルティングファームがサステナビリティ支援サービスを手掛けている。しかしその多くが、ESG格付評価対応やGHG(温室効果ガス)排出量算定支援など「点」の支援にとどまっているのが現状だ。乱立するサステナビリティ課題に対して真摯に取り組むことはもちろん、支援企業だけでなくそのグループ会社や取引先、地域にまで支援領域を拡大し、包括的に企業の価値向上に関わっていく「線」の支援を可能とする組織の必要性を強く感じていた。
日本総研に入社するに当たり、私は新たなサステナビリティ組織の立ち上げを経営陣に進言させてもらった。その進言は経営陣から前向きに受け入れられ、入社するに至ったが、入社を決めたのはそれだけが理由ではない。面接中、人事担当者の方々には常に私の立場に寄り添っていただくとともに、複数の方からフォローアップ面談の機会を頂くなど、企業としての誠意を感じたからだ。相手が信用に値するかどうかは、私にとって重要な要素だった。
入社2年後、私はリサーチ・コンサルティング部門において新たに「サステナビリティ戦略グループ」を立ち上げた。当グループでは、「サステナビリティ課題解決およびステークホルダーとの協働を通じた、企業価値向上への貢献」をミッションとして掲げ、本質的な「サステナビリティ経営」を志向する企業に徹底的に寄り添うことを目指している。
日本総研の強みの1つは、SMBCグループ各社や社内の他部署との連携が図られている点にあると考えている。各社との強固なネットワークにより、企業に対して横断的な戦略の策定や推進が可能な環境がある。入社以来、SMBCや日興証券を中心にグループ各社との連携や情報発信に努めてきたが、その反応は大きく、協業して受注する案件も次々に生まれている。今後は社内の創発戦略センターや調査部との連携をさらに強め、日本総研全体、さらにはSMBCグループ全体としてサステナビリティ事業の拡大に貢献したいと考えている。
転職前後において、私のコンサルティングに向き合うスタンスは何ら変わっていないが、組織における私の立場はこれまでと大きく変化した。既存組織でマネジメントに携わった経験を有していたが、新たな組織を立ち上げ、その長として組織の成長にコミットする立場で働くのは初めての経験だ。より一層の責任感を持って業務にまい進することはもちろん、日本有数のメガ金融グループの一員として、グループ企業とのシナジーを見据え、高い視座を持った組織運営を目指すべく奔走している。新しい挑戦は、私にとって自己を成長させるためのこの上ない機会だと感じている。
日本総研のリサーチ・コンサルティング部門のカルチャーについて、「個」の強さや自由で柔軟な組織体制、風通しのよさを挙げる社員は多い。当部門では各組織グループが裁量権を持って運営を実施しており、入社時に自身がジョインしたいグループを選べる点も特徴的だと言えるだろう。これは私の考えだが、自由な組織には、相応の責任が求められるものだ。自由と責任について各個人が自律的に考え、動ける組織が理想といえるだろう。当グループにはコンサルティング業界だけでなく、事業会社出身の方も多数活躍している。サステナビリティ領域で当社にてキャリアを築くことを検討されている方には、自身が入社後に何を成し遂げたいか、面接の際にお聞かせいただきたいと思う。