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特集:キャリア入社者座談会

自分の仕事が未来の社会に
どう影響を与えるのか。
SDGsの意識を全従業員に浸透させる。

キャリア入社者座談会イメージキャリア入社者座談会イメージ
  • チーフスペシャリストシニアマネジャーイメージ

    M.Murakami

    チーフスペシャリスト 2003年入社

    京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2003年に日本総研入社。ESG調査やサステナブルファイナンス支援に長く従事し、最近は、企業の環境・社会インパクト創出支援、サステナビリティ人材育成、子どもの参加論などに取り組む。

  • シニアスペシャリストコンサルタントイメージ

    T.Watanabe

    シニアスペシャリスト 2008年入社

    名古屋大学大学院国際開発研究科修了後、株式会社富士通総研を経て2008年に日本総研入社。インドを中心に新興国・途上国での社会課題解決型事業立ち上げの他、インパクト投資、インパクト評価支援、サステナビリティ人材育成に取り組む。

1広い視野、長期的な視点がSDGsには欠かせない

お二人はSDGsやサステナビリティの専門家だとお聞きしています。
日本総研としては早くからこの領域に取り組んできたのでしょうか?

Murakami
そうですね。まだどの企業もSDGsについて積極的に発信していない頃から取り組んでいました。私自身も、創発戦略センターに異動してからはほとんどのプロジェクトがSDGsやESG関連です。運用機関からの依頼で、投資家の皆さんと「これからはSDGsに貢献する企業が成長するのではないか」という観点で議論し始めたのが最初で、現在は多くの企業からご相談をいただくようになっています。

2019年に大阪でG20が開催された時には、その場でSDGsが取り上げられるだろうと言われていたこともあり、『SDGs入門』という書籍をWatanabeとの共著で出版しています。
インキュベーション部門座談会イメージ1インキュベーション部門座談会イメージ1
Watanabe
私はアフリカ出張中に書きました(笑)。当時もSDGs関連の書籍は何冊か出ていましたが、気軽に手に取れる入門の本はなかったので、結果的に多くの方にお読みいただけたのかなと思います。

なるほど。お二人で担当したプロジェクト事例についてもお聞かせください。

Watanabe
上場企業である中堅製造業のプロジェクトを一緒に担当しました。クライアントはホールディングス企業なのでさまざまな業態をお持ちなのですが、これから本格的にSDGsに取り組んでいくにあたり、従業員の皆さんに「自分たちの仕事がどうSDGsに貢献しているのかを理解してもらいたい」というのがメインテーマです。

まずはSDGsに関する基礎的な講義を行った上で、「自社の製品やサービスが社会に出ていくと、お客さんや社会、自然環境にどういう影響があるか」というストーリーを考えてもらいました。事業会社で働いていると、一般的には製品を作ることや売ることにフォーカスが当たりますよね。しかしSDGsは世界の問題なので、その先に与える影響の方が重要なわけです。
コンサルティング部門座談会イメージ2コンサルティング部門座談会イメージ2
時間軸も長く捉えて、お子さんやお孫さんの世代になった時に巡り巡ってどんな影響があるのかまで考えることも必要です。もちろん、例えば製造工程におけるCO2削減といったダイレクトな施策もありますが、あらゆる社会活動は広くつながっているので、近視眼的な目線だけでは足りません。

他にも、SDGsのゴールから逆算して今何をしなければいけないかというアイデア出しも実施しました。ここはかなりいろいろなアイデアが参加者の皆さんから出ましたね。もちろん全ての案を即実行できるわけではありませんが、最後の発表会は幹部の方々にも参加してもらいましたし、今後につながる部分はあると思います。

先日お話を聞いたところ、プロジェクトが終了した1年後に改めて「SDGsの考え方をどう自分の仕事に生かせているか」というアンケート調査を自社で実施したそうです。われわれとしても継続性が最も重要だと考えているので、こうした取り組みを続けてくださっているのはうれしいですね。
Murakami
SDGsを本当の意味で浸透させるためには、かなり長い時間をかけて粘り強くやっていく必要があります。一方でわれわれがコンサルタントとして関われるのは3カ月から半年程度の限られた期間になりますから、クライアント側で自走できる状況を作り出すことが大切です。そういう意味では、今回のプロジェクトは今のところ成功だと言っていいのではないでしょうか。

他の案件に関しても、「最終的に自走できるようにご支援する」というコンセプトに共感してくださった方が、われわれのクライアントになっているのかなと感じます。

2ビジネスの可能性拡大も、従業員のモチベーションアップも

プロジェクトを進める中で、日本総研としてはどんな役割を担うのでしょうか?

Watanabe
先ほどお伝えしたストーリー作りやアイデア出しに伴走して、論理的に正しいかどうかチェックしますし、「こういう観点が抜けているのではないか」といったアドバイスも行います。

SDGs自体に良いイメージが付いていることもあり、多くのケースで前向きなストーリーしか出てこないんです。ただ、作用があれば反作用も必ずあるので、われわれとしてはポジティブな意見だけになることは良しとしていません。マイナスな影響も考えることを促すようにしています。

例えば何かを製造すればCO2が出るというのは当然のことですが、それを認識できているかどうかは非常に大切です。認識していれば対応策を取ることもできますから。プラスだけでなく多様なシナリオができるように、視点のダイバーシティは意識していますね。
Murakami
自社の事業と、お客さまやその先の社会とのつながりを考えるためには、多様な視点を織り交ぜながら議論を進めることが大切です。しかし、どうしても企業は一つのカルチャーのもとに価値観の近い方が集まっているので、意識してダイバーシティを確保しなければ視野が狭くなってしまいます。あるケースでは、われわれに加えて外部のNPOや自治体からゲストをお招きするパネルディスカッションも企画しました。

イベントや研修の企画運営、その中でのファシリテーションなどさまざまな役割を推進しているのですね。

Watanabe
その通りですし、先ほどのクライアントでは、Murakamiはプロジェクト終了後もサステナビリティ推進委員会のアドバイザリーとして継続的に関わっています。
Murakami
プロジェクト期間中ほどの濃度ではないですが、長くお付き合いさせていただいています。グループ会社の経営陣が集まる会議が年に2,3回ありまして、それに私も出席したり、事務局の皆さんと「今度はこんなイベントをやろう」とディスカッションしたり。こういう形でアドバイザリーを務めるケースは部内の他の研究員にも時々ありますね。

そもそもの話で恐縮ですが、
クライアント企業はなぜSDGsに取り組むことにしたのでしょうか?

Murakami
まずは上場企業として、SDGsに全く取り組んでいないというのは許されない時代になっているからです。数年前までは超大手企業や先進的な企業だけがやっているイメージでしたが、今はそうではありません。大企業やグローバル企業が「CO2排出量をモニタリングして、環境負荷を低減できるよう努めていること」を取引先の条件として掲げているケースもあります。
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Watanabe
今回のプロジェクトとは別の話ですが、グローバル展開している半導体企業が昨年九州のある地域に進出しました。その企業も調達要件に厳格な基準を設けていて、SDGsを満たしていることは大前提とされています。せっかく世界の大企業が近くに来ても、SDGsに対応していなければ取引の土台にも乗れないわけです。これは全世界的に起きていることで、地域の中堅中小企業も今後の生き残りをかけてSDGsを意識するようになっています。
Murakami
もちろん理由はそれだけではありません。自分の仕事が社会をよくすることにつながっていると実感できれば、従業員の皆さんのモチベーションも上がります。

SDGsへの取り組みは、組織のコミュニケーションを活性化させる接着剤のような役割を担ってくれます。サステナビリティは当然ながら1つの部門で完結する話ではありませんから、役職や世代を超えて意見を交わすきっかけになるわけです。

実際にそういった効果も出ていまして、プロジェクト終了後もグループ会社同士で「これをやったら電力消費量が下がった」などといった情報交換が行われていると聞いています。

3社会課題を基点として、研究とビジネスを両輪で進める創発戦略センター

この仕事に向いているのはどんな人だと思いますか?

Watanabe
われわれの所属する創発戦略センターが果たしている役割は、一般的なコンサルタントとはやや異なります。今回ご紹介したのは特定の企業をクライアントとしたプロジェクトですが、日本総研が独自に投資して調査研究を行い、その結果をベースにコンサルティングにつなげるケースも多くあります。

そういう意味では研究者とコンサルタントの中間ぐらいの役割と言えるでしょうか。どちらかに偏りすぎることなく、研究とビジネスをバランスよく考えられる人に向いている仕事です。新卒の方にはまず、ご自身の強い思いを持っていることを求めたいですね。この領域に興味がある、社会をこんな風に良くしていきたいという思いと自分なりの理論を持ち、それを求心力としてビジネスをつくっていける人に育っていってほしいと思います。
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Murakami
同意見です。自分自身で旗を立てて、その旗に対して「いいね」と言って多くの人が集まってくれるのが理想形です。また、その旗は一企業ではなく日本の産業や社会全体を変革させるものでなくてはなりません。結果的にそれが企業へのコンサルティングに生かされることは事実ですが、スタートラインの違いは意識しています。

ですから、自分自身のテーマや意見を強く持ち、たとえすぐに利益にはならずとも本気でそのテーマに向き合い続けられる人が向いていると思います。

そういった社会課題やテーマを見つけるために、
意識して取り組んでいることはありますか?

Murakami
特別なことはあまりないですが、紙の新聞を読む習慣は続けています。今は何でもデジタルで情報収集できる時代ですが、私には紙のサイズ感が合っているんですよね。なぜこの話題が、自分の興味に関係なくこんなに大きく取り上げられているんだろう、といった視点も持てるので、そこは大切にしています。
Watanabe
私も日々の情報収集は他の人とあまり変わりません。ただ、世の中や社会に対して疑問に感じることは自分なりにリストにしています。例えば自動でお湯はりをした際に「お風呂が沸きました」というアナウンスが流れますが、あれって全て女性の声ですよね。これはどうしてなんだろうと思っていたら、ユネスコの記事で「SiriやAlexaの声が女性なのは女性差別を無意識に助長するのでは」というレポートを発見して、こういう考え方は私だけじゃなかったんだなと。

そんな風に、世の中で「普通」とか「常識」とされていることにも適切な違和感を抱ける方は、創発戦略センターに向いているかもしれません。
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