オーストラリアの大学院でインターナショナルリレーションズの研究に取り組んだ私は、日本に帰国後は独立系のコンサルティングファームに入社。3年間にわたり、住宅不動産業界に特化したコンサルティング業務に従事した。マーケティング&セールス提案を中心に、人事評価制度設計や中期経営計画・戦略策定業務など、幅広い領域で経験を積めたことは幸運だったと思う。次のキャリアを見据える中、私はかねて興味関心の強かった人事領域を究めたいと考えるようになった。大学院時代に人権問題を学んだことで日本企業のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが海外ほど進んでいないことに強い課題意識を持っていたからだ。前職は人事領域専門のチームがなかったため、人事に特化した業務を担当できる環境を求めて転職活動を始めた。日本総研のリサーチ・コンサルティング部門の面接は、最初から印象的だった。会社の注力領域とは別に、自身がやりたい研究や商品開発に主体的に取り組んでよいという社風で、自由で風通しのよい企業カルチャーを強く感じた。
現在、私は人事組織・ダイバーシティ戦略グループに所属している。人事領域に関するテーマのコンサルティングを幅広く実施しているグループだ。私は人事戦略策定などの既存テーマのコンサルティングに取り組む一方、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に関する研究会を企画し、独自にこの問題と向き合う活動を始めた。既存顧客に対し、ダイバーシティ&インクルージョンにどのように取り組んでいきたいかをヒアリングし、収集した情報をベースに商品開発や執筆・営業活動を実施。近年のダイバーシティ推進に対する企業の関心の高まりもあり、大きな手応えを感じている。
私の活動のベースとなっている情報発信力や営業力は、前職の独立系コンサルティングファームでの経験を通じて身につけたものだ。日本総研はグループ会社との連携が強く、銀行などのチャネルを通じてクライアントを紹介してもらうケースもある。前職よりもクライアント開拓の負担が減少した分、創造的な思考に多くの時間を充てられるようになったと感じている。
日本総研のリサーチ・コンサルティング部門には、コンサルタント個人の挑戦を認め、支援する環境がある。年次や年齢、役職等にかかわらず、手を挙げれば比較的自由に活動できる風土は、私のように自身のテーマが明確な人間にとっては最適の環境だと思う。
日本総研への転職後、私は常に自分の専門性を高めるための研さんを怠らないよう努めている。その一方、視野を広く保つこともまたコンサルタントとして重要と理解しており、意図的にクロスアサイン(他のチームとの合同案件)ができるように工夫したり、業界ごとの動向や戦略トレンドなどの知識のアップデートを欠かさず行ったりしている。人事領域に特化したスペシャリストとして、企業に内在する不平等な構造を少しでも改善し、多様な組織を生かす組織づくりに貢献するために、あらゆる面から学びを深めていきたい。
近年、日本企業において急速にダイバーシティ&インクルージョンに関する興味関心が高まっている。しかし、ダイバーシティはいまだ女性活躍の文脈で語られるにとどまっており、女性活躍推進においても道半ばにある企業が多いのが現状だ。また、ダイバーシティに対する意識差は企業ごとにグラデーションがあるとも感じている。本来的な「ダイバーシティ推進」とは、これまで日本企業でマジョリティとされてきた人々を中心に作られてきた制度や風土を見直し、多様な人材と共に常に変革し続ける組織をつくっていくことだと私は考える。小手先だけの取り組みではなく本質的な課題と向き合い、解決に向けた戦略をクライアントと共に考えていきたい。
今後の展望として、私はライフワークとして女性のエンパワーメントに関わりたいとの思いを強く持っている。社会や企業に存在する不平等な構造は、一企業だけで解決できるテーマではない。国や自治体、地域を巻き込んだ大きな変革が必要で、そのために自分にできることは何だろうと常々考えている。もしかすると日本総研でこのテーマに取り組んでいくことになるのかもしれないが、今はコンサルタントとしてさまざまな企業の人事課題と向き合っていきたい。そのための学びは、この組織に豊富にあるのだから。