当社に入社する以前、私は理学療法士として医療機関に勤務していた。理学療法士を目指したきっかけは、高校時代にさかのぼる。当時陸上競技の選手だった私は大けがを負い、入院中に出会った理学療法士が単純にかっこいいと感じたからだった。大学で理学療法士免許を取得し、その後学部時代の恩師である教授の研究室で学びたいと考え、大学院で高齢者のリハビリテーションに関する研究に従事した。卒業後は国内の病院勤務を経て、日本理学療法士協会から推薦を受けてシンガポールの医療機関へ派遣され、3年間を海外で過ごした。目の前の患者さんを支援する理学療法士の仕事は、実に大きなやりがいを感じられる。しかしその一方で、医療や介護に関わる制度が現場の課題とかみ合わないことにもどかしさを感じていたのも事実だった。マクロな視点で高齢者福祉に取り組み、制度やしくみに働きかけられるようなインパクトのある仕事を目指し、私はシンガポールを後にした。
介護・福祉分野のコンサルティングは、「ビジネス」と「ケア」の発想を両立させなければ成立しないと私は考える。ケアに関わるコンサルタントとして「利他の心」がなければ、当事者である高齢者の方々や現場で働く人達へ支援の手は届かず、すべてが中途半端になるだろう。私は帰国後に複数のシンクタンク・コンサルティングファームを受験したが、介護・福祉を単なるビジネスの1テーマとしか捉えていない企業が多く、失望することが多かった。しかし当社の面接官だった運営部長だけは、これまで出会ったコンサルタントとまったく違う印象を受けた。その言葉の端々に、この人は本気だ、介護・福祉の問題を真剣に解決したいと考えているのだとすぐに分かり、強い感銘を受けた。この人とぜひ一緒に仕事がしたいと思い、私は入社を決意した。
現在、私は高齢者や障がい者に関する調査研究やコンサルティングを担っている。中でも私の専門領域は、テクノロジーを活用した「次世代型介護」へのアップデートだ。高齢者の方々の生活がより豊かになるようなテクノロジーの在り方を考え、官公庁を中心に民間企業や自治体などさまざまな組織に対する支援を行う。例えば、高齢者の自立支援、ケアの高度化・平準化、介護人材不足の解消などといった超高齢社会における諸課題に対し、テクノロジーを使ってどう解決していけばよいかをさまざまな側面から提言している。
私の所属する「高齢社会イノベーショングループ」は、「産官学、現場と政策のハブとなり、Well-Beingがあふれる超高齢社会の実現に貢献する」というパーパスを掲げている。われわれが担当する調査研究業務の多くは公共案件であり、われわれが得る報酬には税金が使われている。当社に入社してから、責任と自覚を持って社会貢献に寄与したいとの思いをより一層強くし、日々の業務に当たっている。
理学療法士として医療現場で働いた経験は紛れもなく自身の強みであるが、今の私を支えるのはその知見だけではない。大学時代に感じた理学療法の現場に関する強烈な問題意識、大学院で得た研究者としての考え方や人脈、シンガポールの医療現場で感じた海外と日本の差異など、これまで私が取り組んできたことすべてが有機的につながり、日々のコンサルティングに生きていると感じている。コンサルタントとしての動き方を理解するまでは少し時間を要したが、いったん「勘所」が理解できれば、その後は想像以上にスムーズに業務を進めることができた。また当社には定型化されたマニュアルこそないものの、目指したい姿や身に付けたいスキルを先輩コンサルタントに相談すれば、誰でも丁寧に指導してくれる。そのあたりも、何事につけ個人の意志と自律性を尊ぶ当社らしい点だ。
私のコンサルタントとしての活動の根源には、「年齢を重ねても、たとえ障がいを負ったとしても、尊厳を持ったその人らしい人生を歩んでほしい」という思いがある。本気で社会課題に向き合い、解決に貢献したいとの熱意を自身の経験とともに心の底から語れる方なら、きっと当社にフィットするはずだ。