グローバル企業の経営に貢献する、
新たな金融サービスの仕組みを創る

企業の国際競争力強化に欠かせない、
「グローバル・プーリング・システム」

昨今、グローバルに事業を展開する企業の間で、「グローバル・プーリング・システム」という仕組みが注目されている。これは、海外の子会社がそれぞれ抱えている資金を一元管理し、子会社で生じる資金の過不足を親会社が調整していくことで、グループ全体で効率的に資金を運用し、財務面を強化して企業の競争力向上を図ろうというものだ。三井住友フィナンシャルグループにおいても、グローバル企業の顧客により価値の高い金融サービスを提供するために、グローバル・プーリング・システムを早急に開発することを大きな課題としていた。この重大な使命を担ったのが、日本総研だ。

01過去に例のない規模の開発プロジェクト

N.Hanari
グローバル・プーリング・システムを担当する決済システム開発部の部長。
プロジェクトの総責任者として、全体を統括する立場を務める。
M.Yasoshima
決済システム開発部の次長として、このプロジェクト全体をサポート。
国と国をまたぐクロスボーダーな資金決済システムについては豊富な実績を有する。
「我々に課せられたのは、銀行が取引している大企業のお客様がグローバルに抱えている資金を一元管理できるシステムの構築。これを進めていくためには、すでに稼働している銀行内の様々なシステムと連携させなければなりません。つまり、社内はもちろん、ユーザーの銀行側でも実に多くの部署の方々が関わる必要がありました。私がこれまで経験してきたプロジェクトのなかでも、これほど関係者が多いものは初めてでした」と部長の羽成は振り返る。
事実、このグローバル・プーリング・システムを実現するには、30にも及ぶ周辺システムの機能に改定を加えなければならず、その調整だけでも困難なプロジェクトになることが予想された。さらに、一刻も早くお客様にサービスを提供するために、スケジュールもきわめてタイトなものであった。スーパーバイザーのような役割でプロジェクトを支援した次長の八十嶋はこう語る。
「通常であれば2年はかかるようなプロジェクトを、1年3カ月で成し遂げることが我々のミッションでした。しかも構築するのは巨額の資金が動く決済系のシステムであり、企業のお客様の業務に直接大きな影響があるため、絶対的な信頼性が求められます。短い構築期間でも高い品質を保てるよう、開発工程で頻繁にチェックポイントを設け、問題が生じた時点で早急に対処できる体制を整えました。またスピードを上げるため、過去すでに活用した経験のあるソフトウエア開発の自動化技術も導入しました」。
こうした難易度の高いプロジェクトにこそ、日本総研の実力は発揮される。大規模でありながら、スピードと品質の両方を高い水準で実現すべく、これまで培ってきたプロジェクトマネジメントや開発手法に関する豊富なナレッジを投入する計画を立て、このプロジェクトは始まった。

02プロジェクトの核は若手

H.Shinozaki
プロジェクトマネージャーを担当。これほど大規模なプロジェクトを率いるのは、彼にとっても過去に経験のないチャレンジだった。
そして、このグローバル・プーリング・システム開発のプロジェクトマネージャー(PM)を託されたのが篠崎だった。彼は日本総研入社後、決済システムの担当を経た後に、銀行に出向して経験を積んできた。銀行ではユーザー側の視点での開発マネジメントなどに携わり、日本総研に戻るやいなや、このプロジェクトを率いることになった。すでに豊富なプロジェクト経験を持つ篠崎も、これほど大きなプロジェクトをマネジメントするのは初めてだった。
「社内で非常に注目されていたプロジェクトのPMに任命されたことはとても光栄でしたが、一方で本当に多くの関係者を動かしていかなければならず、難しいプロジェクトになることは明らかでした」。
その篠崎とともに、業務リーダーとしてシステム構築の管理にあたったのは20代のメンバーだった。若いうちから、こうした大規模プロジェクトでリーダーを担えるチャンスを積極的に提供し、個人の成長を促していくのも日本総研らしいカルチャーだ。こうして篠崎と若手メンバーが主導する形で、このプロジェクトは推進されていった。

03求められたのは、確固たるリーダーシップ

篠崎の予想通り、このプロジェクトは関連部署との調整が大きな鍵となった。
「関係者が多いということは、それだけ利害が対立する要素が多いということです。ユーザーと要件を詰めて設計製造したこのグローバル・プーリング・システムをテストする際にも、関連する膨大なシステムとうまく繋がって機能するかどうか、検証を重ねていかなければなりません。そこで何か不具合が生じれば、それぞれのシステムの担当部署と協議して、問題の解決を図っていきました。解決方法をめぐって互いの意見が対立しても、プロジェクト全体を俯瞰できる中心的な立場にあるのは我々です。プロジェクトにとって最適な「解」だと我々が判断すれば、それに沿って周囲を導いていかなければならない。そうした関連部署とのコミュニケーションにはかなり苦労しましたし、試行錯誤の繰り返しでした」。そう振り返る篠崎だが、周囲の眼には非常に頼もしいPMに映った。
部長の羽成も「篠崎は緻密に思考して説明する能力に優れており、決断が速い。自分の判断を関係者がきちんと納得できるよう、丁寧に働きかけていました。PMのあるべき姿としてメンバーたちの手本になったと思います」と彼を評する。そんな篠崎の活躍もあって、プロジェクトは大きなトラブルを抱えることもなく順調に進んでいった。篠崎は言う。
「確かにPMは責任の重い仕事ですが、自分が主体となって問題を解決し、難しいプロジェクトが前進していくのは、このポジションならではの醍醐味です」。

04自ら海外に赴き、プロジェクトを前進させる

このグローバル・プーリング・システムは、日本とアジアをつなぐグローバルなシステムであり、構築にはバンコク・シンガポール・香港・台北・デリーで稼働しているシステムとの連携も欠かせない。これらのアジアの各拠点とのやりとりにおいては、プロジェクトの若手メンバーが奮闘した。日常的にメールやテレビ会議で各拠点とコミュニケーションをとって開発を指示。そして、プロジェクトの工程においてきわめて重要なシステムテストを開始する段階では実際に現地へ足を運び、システム担当者とテスト内容を綿密に打ち合わせた。篠崎は語る。
「若手メンバーは海外出張が初めてなこともあってプレッシャーを感じていたようですが、異文化のなかで懸命に各国のシステム担当者とリレーションを築いてくれたことで、その後のプロジェクトの進行がたいへんスムーズになりました。そうした若手の活躍も、プロジェクトの成功に大きく寄与したと思っています」。

05成し遂げた後、大きな成長を実感

篠崎たちの努力の甲斐あって、このグローバル・プーリング・システムは無事スケジュール通りに構築することができた。部長の羽成は語る。
「このシステムが稼働したことで、三井住友銀行は世界水準の金融サービスを提供できる体制が整い、顧客であるグローバル企業の経営に大きく貢献できるようになりました。こうした世の中の経済活動に大きな影響を与える仕組みを、多様なメンバーがそれぞれの強みを活かし、ひとつのチームになって創り上げていく。それが日本総研の醍醐味だと私は捉えています」。
八十嶋も続ける。「日本総研でプロジェクトを担うには、金融ビジネスを理解し、技術にも精通し、さらにユーザーと折衝してシステムを企画する力や、もちろんプロジェクトを管理する力も求められる。こうしたポジションを、篠崎のように若いうちから経験できるのが日本総研の魅力であり、これほど成長できる環境は、他にはそうはないと思います」。
プロジェクトを終えて、「PMとしてこれだけのプロジェクトを無事成し遂げたことは、とても大きな自信につながった。今後もさらにスケールの大きな案件をこの手でリードしていきたい」と篠崎は意気込む。高度で困難なプロジェクトへの挑戦を通して人材が大きく成長し、それが日本総研のさらなる進化の原動力となっていくのだ。