切れ味鋭いレポートが
政策の羅針盤となり
社会を変える力になる。
リサーチ部門
  • 中堅
  • 男性
  • 文系
M.Fujiyama
所属 : 調査部 入社 : 2001年 専攻 : 経営学部 趣味 : 自動車、観光
日本総研調査部でのキャリア : 2004年2月~金融市場・金融ビジネス、2008年5月~日本経済、 2011年4月~米欧経済、エネルギー市場の調査・分析を担当。
2014年4月~マクロ経済研究センター欧米経済グループ長

考え抜いたはずのレポートが
跡形もなく修正されて返って来る日々。

「君のレポートは新しい着眼点に欠ける。このレポートを出すことに何か意味があるの?」まだエコノミストとして駆け出しだった頃、繰り返し上司に言われた。自分で作成したレポートは跡形もなく修正されて返ってきた。ふがいなさで自分に腹が立った。レポートは大まかにGDP予測など即時性が求められるもの、月次経済動向など定期的なアウトプットを前提とするもの、1つのテーマについて詳しく論じるものと3パターンに分かれる。しかし、定期的なアウトプットをすることがそもそも厳しかった。というのも、レポートを書き始める前に、何を書きたいのかを簡単にまとめたペーパーを上司に提出するのだが、ここでほとんどの場合、駄目出しを食らうのだ。エコノミストの発言は様々な方面から注目される一方、年々その発言の質が厳しく問われる傾向にあると思う。インターネットの発達によって、一般の人と専門家の情報格差は昔にくらべて格段に少なくなった。誰でも膨大な情報が容易に入手でき、自由にネット上で発言できる今、誰もが思いつくようなことしか発信できなければ、エコノミストの価値はない。統計や裏付けとなる根拠を示しながら、これまでにない新しい視点、斬新な意見を提起することが求められているのだ。

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百家争鳴の調査部の頭脳を活用
エコノミストとしての勘所を身につける。

真っ赤になったスケルトンを前に次の切り口を考える毎日。なかなか光が見えてこない。行き詰ってどうしようもなくなり、周りの上司、先輩、同僚にヒントを求めた。日本経済の担当者、海外経済の担当者、金融市場の担当者。日本総研の調査部には、様々な分野のプロフェッショナルがいる。ディスカッションや廊下での立ち話を繰り返し、あらゆる角度からテーマを見つめ直していった。調査部には長年の研究を通じて持論を確立している人が多く、時に主張が対立することも少なくない。しかし徐々に自分の主張をしつつ、先輩の意見を自分の主張にうまく取り入れる勘所が身についていった。自分とは異なる意見を得て視点がより拡がり、より多角的にテーマを捉えられるようになるにつれ、レポートに深みが増していく。それが自信になり、気がつくと上司と議論ができるようになっていた。実のところ、上司にはまだまだ自分の間違いを気付かされることの方が多い。しかし、自分の中に少しずつエコノミストとしてのコアが生まれつつある気がしている。

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エネルギー関連のレポートが注目を浴び
全国放送の朝のニュース番組に出演。

以前発表したレポートが、ちょっとした反響を呼んだ。タイトルは『LNG火力の燃料調達コスト抑制に向けた課題』。ちょうどエネルギー問題がクローズアップされてきた時期だ。内容はシェールガス革命に伴う世界的な天然ガス需給の変化を分析し、そうした変化に日本がどのように対応していくべきかを述べたものだ。「斬新な提言ですね」。レポートを発表するやいなや、新聞、雑誌の取材が相次いだ。テレビ番組の制作ディレクターから番組出演の依頼があり、テレビのニュース番組でコメントを述べたこともある。同じようなエネルギー関連のレポートがあまたある中から番組のディレクターが自分の記事に着目してくれたことは、エコノミストとして純粋に嬉しかった。エコノミストの仕事は、評価が見えにくい部分があるが、マスコミや官庁など外部からの問い合わせの多さは、その論文の評価を知るバロメーターの一つだといえるだろう。マスコミに出る機会は、自分にとって仕事のモチベーションを上げる要素の一つだ。ただ、テレビを見た友人からは、辛口の評価を受けることも。誰をターゲットにしてレポートを書き、話すのかはエコノミストとして一番に考えなければならない。テレビを見ている一般の方にとって分かりやすく話すのは非常に難易度が高く、自分はまだまだツメが甘かったようだ。
エコノミストの仕事は、基本的に孤高だ。自分が世に出したレポートは、たとえ入社したての新人でも個人名で発表され、自己の価値を問われることになる。コンサルタントとは異なり、厳しく注文をつける顧客も、「ありがとう」と言ってくれるユーザーもいない。良質なアウトプットを出し続けることは、ある意味で自分自身との戦いの日々であるといえるだろう。しかし、自分の仕事が他者に及ぼす影響は無限大であり、だからこそこの仕事は面白いと思う。将来、専門家として政府のブレーンとなり政策立案のアドバイザーとなることも一つの目標だ。実際の法案作成に貢献でき、社会を変えていく力にもなれる。今はそこまで自分が関与できないが、自分が書いたレポートが新聞に取り上げられ、官僚や政治家がそのレポートを読み、実際の政策に活かされればこんなに嬉しいことはない。誰も気がつかなかった視点から物事を提示し、その結果、社会が動く。そうした理想に向かって、エコノミストとしてのキャリアを歩んでいきたい。