今回のプロジェクトは、グループが推進しているインフラシステム共通化の「一丁目一番地」といえる取り組みですね。
Ide
はい。SMBCグループでは、グループ全体でコストを最適化する取り組みの一つとして、グループ各社が共通で利用できるインフラシステムの共通化についてさまざまな部署で検討されています。グループのITソリューションをリードする日本総研がその「旗振り役」を担当しているのですが、中でも私たちが担当するコンタクトセンター共通化プロジェクトは、その先駆けともいえる取り組みでした。どのグループ企業のコンタクトセンターでも組織構造が似ており比較的共通化がしやすく、効率化によるメリットも大きいと考えたのがその背景にあります。
Taniguchi
既存のシステムをグループ内で横展開するというケースはこれまでにもありましたが、今回のようにグループ全体で最適化を図るシステムを最初からつくるのは、ほぼ初めての取り組みです。各社にヒアリングを行うと、同じグループの金融機関といっても、各社のコンタクトセンターの構造やシステム設計は企業によって想像した以上に異なっていることが分かりました。
Ide
そこで、今回は共通化を図る最初のフェーズとしてシステム基盤(ミドルウェア)の共通化とシステム設計ガイドラインの統一を実施しました。いきなりあれもこれも共通化しようというのではなく、次回のシステム更新時にさらなる共通化を進めるための土台をつくるという側面を意識しています。
Taniguchi
また、新しい取り組みの一つとして、今回の共通システムの構築・運用の対価を「サービス利用料」としてグループ企業各社から毎月徴収する形にしています。いわゆるサブスクリプション制ですね。
Ide
これまではシステムを開発するとグループ各社にシステムを「納品」して委託制作費を徴収し、その後の運用は、業務によって都度運用費が発生するという料金システムだったので、大きく変わりました。システムを納品したら終わり、ではなく、各社と恒常的につながりを持ち、責任を持ってコンタクトセンターの構築・運用に携わっていくというわれわれの姿勢の象徴ともいえると思います。
本プロジェクトを推進する上で、どのような点に難しさがありましたか。
Ide
最初に実施したのは、情報収集です。各社のコンタクトセンターの運営状況を念入りに調査して、グループ各社すべてにとって品質向上につながる「共通化」の定義を徹底的に具体化しました。もっとも難易度が高かったのは、各社との合意形成です。今回は5社以上の企業が参加しているプロジェクトで、情報システム担当者から現場のオペレーターまで、本当にさまざまな立場の方が関わっています。コンタクトセンターで働く方々がシステムの変更によって不安を感じないよう、しっかりとご説明し、今回のプロジェクトが業務改善につながることをご理解いただく必要がありました。対話を繰り返し、何度も改善を進めた結果、最終的に無事リリースを成功裏に収めることができました。
Hirano
この共通化プロジェクトに参加したグループ企業の中には、今回初めて協業する会社もいくつかあり、各社との信頼関係の構築は業務を進める上で重要な要素でした。コンタクトセンターの構造そのものは確かにどの企業も似ているのですが、コンタクトセンターの運営方法は各社さまざまな考え方、価値観があり、おのずと業務内容は異なってきます。われわれとしてはできる限り各社の意向に寄り添う一方、共通化への理解を求めながら進めていく必要がありました。大変でしたが、どの企業も一緒にいいものをつくっていこうというスタンスを強く持ってくださっていて、それがとてもうれしかったですね。